最高裁判所第二小法廷 昭和26年(オ)784号 判決 1954年11月26日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人等の負担とする。
理由
上告人等訴訟代理人山田節三、同佐藤久四郎の上告理由は末尾添付のとおりである。
上告理由第一点について。
訴状に所定印紙を貼用せず、またはそれに不足ある場合、上級審において之を追貼するときは、訴状は始めより有効となるものと解するを相当とする。本件記録によれば被上告人は第一審において共同被告中の上告人佐々木茂に対しその訴状送達前一旦訴を取下げたところ、その後所論上申書を提出し先きに取下のあつた訴状を流用して新訴を提起したが、その訴状に所定印紙の貼用がなかつたことが認められる。しかし被上告人が当審において右新訴の訴状に昭和二九年一〇月二〇日所定印紙を追貼したこと記録上明らかであるから、之により右新訴の訴状は始めより有効となるに至つたものである。それ故原判決は有効に係属していない訴訟につきなされた違法があるとの論旨は採るを得ない。
同第二点、第三点について。
第二点は原審のした証拠判断、事実認定を非難するものであり、第三点は原審で主張せず且つ仮定の事実に立つて原判決を非難するものであつて、何れも上告適法の理由とならない。
よつて、民訴四〇一条、同九五条、同八九条に従い、裁判官全員一致の意見によつて主文のとおり判決する。
(裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)
裁判長裁判官霜山精一は退官につき署名押印することができない。
(裁判官 栗山 茂)